バルト・フェルブルッヘンのプレースタイルをひと言で表すなら、「攻撃の一手目をつくれる現代型GK」です。ブライトンではロベルト・デ・ゼルビ体制下でも、そしてファビアン・ヒュルツェラー体制下でも、単なるシュートストッパーではなく、ビルドアップの起点として扱われてきました。実際、ブライトン公式やOpta系の分析では、彼の足元の技術、プレッシャー下での配球、そしてビルドアップ参加の量が繰り返し評価されています。
しかもフェルブルッヘンは、足元が巧いだけのGKではありません。アンデルレヒトでは2022/23シーズンのクラブ年間最優秀選手に選ばれ、ブライトンでは2024/25に正GKとして定着。2026年4月時点でクラブ通算101試合出場に到達し、オランダ代表でもEURO 2024でナンバーワンに指名され、その後の欧州予選でも継続して出場しています。若さ、配球力、反応速度、そして高いラインの背後を消す守備範囲。この4つが揃っているからこそ、いま欧州で高く評価されているわけです。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 選手名 | バルト・フェルブルッヘン(Bart Verbruggen) |
| 生年月日/年齢 | 2002年8月18日(23歳 ※2026/06/04現在) |
| 身長(cm) | 193cm |
| 国籍 | オランダ |
| ポジション | ゴールキーパー |
| 所属クラブ(国名) | ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオン(イングランド) |
| 市場価値 | 40.00m € ※2026/06/03時点 |
バルト フェルブルッヘンのプレースタイル
足元の技術で相手のプレスを外すGK
フェルブルッヘン最大の武器は、やはり足元です。ブライトン加入時のクラブ公式紹介でも、「現代のGKにはシュートストップ以上のものが必要で、相手のプレスを受けても落ち着いて、意図を持って配球できなければならない」と説明され、その条件にぴたりと合う存在として彼が語られていました。Total Football Analysisのスカウトレポートでも、短いパスの精度、角度を変えて受け直す動き、そして中長距離の配球レンジが高く評価されています。
Opta Analystの比較記事では、2023/24のプレミアリーグでフェルブルッヘンは1試合平均34.9本のパスを89.5%の成功率で通し、いずれも同リーグのGKトップ水準とされました。さらにHudl StatsBombの分析では、プレッシャー下のパス成功率が高く、無理に派手な縦パス一辺倒へ行くのではなく、まずはボール保持を成立させながら前進の道を探るタイプだと整理されています。つまり彼は「足元が上手いGK」ではなく、「足元で相手の守備を動かせるGK」なのです。
高い最終ラインを支えるスイーパー性能
フェルブルッヘンの価値は、配球だけではありません。ブライトン公式の2026年4月時点の分析では、彼はOptaが定義する“smother”――ゴール前へ通された低いボールに素早く飛び出して収める対応――でリーグトップとされました。これは、ただ前に出る勇気があるというだけではなく、背後のスペースを読むタイミングと、飛び出すか構えるかを決める判断が優れていることを意味します。
実際、2025/26シーズンのブライトンの試合分析でも、彼は高い最終ラインの背後をカバーする存在として言及されており、ビルドアップ参加とあわせて守備範囲の広さがチーム構造を支えていました。現代サッカーでは、最終ラインを押し上げるほどGKの守備範囲は重要になります。その点でフェルブルッヘンは、守るというより「後方のスペース管理まで含めて統率するGK」に近いタイプです。
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近距離反応とセービングで試合を壊さない
足元の巧さが目立つ選手ほど、「結局セービングはどうなのか」と見られがちですが、フェルブルッヘンはその点でも評価を積み上げてきました。Total Football Analysisのアンデルレヒト時代のレポートでは、彼は2022/23に高いセーブ比率と優れた近距離対応を見せ、速い反応と安定したハンドリングが強みとして挙げられています。Opta Analystも、同シーズンのベルギーリーグで彼が3.4ゴール相当を防ぎ、リーグ最高のセーブ率を記録したと紹介しています。
その素質はプレミアでも磨かれました。ブライトン公式の2026年4月の記事では、彼は平均的GKを基準にした“goals prevented above average”でリーグ2位級の数字を出しており、ショットストップ面でも大きく成長したと評価されています。つまりフェルブルッヘンは、配球力のあるロマン型ではなく、セービングでも勝点を残せる完成度に近づいている最中のGKです。
組み立てに“参加”するのではなく、“設計”する
フェルブルッヘンのプレーを見ていて面白いのは、彼が後ろでただボールを回しているだけではないところです。アンデルレヒト時代の分析では、センターバックを広げる立ち位置、パスを出したあとに受け直す動き、そして相手が短い配球を警戒した瞬間に対角や前線へ長いボールを差し込む感覚が評価されていました。GKなのに、まるで一段低いレジスタのような役割を担える。そこが彼の希少性です。
2025/26のブライトン公式分析でも、彼はリーグのGKのなかでタッチ数とパス試行数が最も多く、ヒュルツェラーのビルドアップの中核だったとされています。チェルシー戦では69本のパス、うち15本をファイナルサードへ届け、同記事ではヒュルツェラーが彼をマヌエル・ノイアーになぞらえたことまで紹介されました。もちろんノイアーと完全に同型ではありませんが、「ビルドアップの土台になれるGK」という意味では、比較の意図はよく分かります。
課題はハイボール処理とリスク管理
一方で、フェルブルッヘンは万能完成形ではありません。ブライトン加入時の紹介では、ベルギーの記者ユルゲン・ヘリルが、彼はクロスに対するハイボール処理をさらに改善できる余地があると語っていました。また、足元に自信があるぶん、相手を引きつけすぎて危険を招く場面が起こりうるとも指摘されています。
実際、Opta Analystは2023/24に彼がボール保持時のミスから失点に直結した場面を2度記録したことを紹介しています。ただ、ここは弱点というより、彼のプレースタイルと表裏一体のリスクだと見るべきでしょう。ブライトン側の論調でも、多少のミスの代わりに、何倍もの価値がある縦パスや前進の起点をもたらすタイプだと整理されています。言い換えれば、フェルブルッヘンは“安全第一”のGKではなく、“勝つために前進を選ぶGK”です。
エピソードとハイライト
幼少期からNACブレダ育ち、そこからアンデルレヒトへ
フェルブルッヘンはオランダ・ズヴォレ生まれで、育成年代ではWDS’19、NACブレダを経てキャリアを積みました。Transfermarktのプロフィールでは、WDS’19が2008年から2014年、NACブレダが2014年から2020年の育成クラブとして記載されています。地元クラブで大人の試合経験を重ねたというより、育成の段階で「将来性を買われて外へ出た」タイプのGKです。
ブライトン公式の加入時特集では、彼は“故郷のクラブ”NACブレダからアンデルレヒトへ移り、トップチームでは出場のないままベルギーへ渡ったことが紹介されています。この時点で彼は、完成品ではなく「足元に際立つ才能を持つ未完のGK」と見られていました。だからこそ、獲得した側の見る目が問われる素材だったとも言えます。
コンパニが見抜いた“足元の才能”
その才能を強く評価したのが、当時アンデルレヒトを率いていたヴァンサン・コンパニでした。ブライトン公式の特集では、コンパニが「足元に優れたGK」を求めていたこと、そしてGKコーチのイェレ・テン・ラウウェラールとともにフェルブルッヘンを獲得したことが紹介されています。彼のキャリアは、まさに“現代型GKを育てる文脈”のなかで伸びたと言っていいでしょう。
プロデビューは2021年5月のクラブ・ブルッヘ戦。ブライトン公式によれば、その一戦でトップチームの扉を開いたのもコンパニでした。名将候補として知られる指導者の下で、まず足元を評価され、次に実戦の舞台へ押し上げられた。この流れは、後のブライトン移籍やオランダ代表定着まできれいにつながっています。
2022/23後半、アンデルレヒトで一気にブレイク
本格的な転機になったのは2022/23シーズン後半です。アンデルレヒト公式によれば、彼のジュピラー・プロ・リーグ初先発は2022年12月26日のシャルルロワ戦でした。そこから一気に立場を上げ、ブライトン側の紹介では、リーグ17試合で8クリーンシート、セーブ率76%という数字を残したとされています。
この活躍は、ファン投票にもそのまま表れました。アンデルレヒトは2022/23シーズンの年間最優秀選手にフェルブルッヘンが選ばれたと発表しています。加入当初は控え気味だった若いGKが、シーズン後半だけでクラブの顔になる。ここに、彼の急成長ぶりが凝縮されています。
ルドゴレツ戦、PK戦3連続セーブで主役になる
フェルブルッヘンの名が欧州で広く知られるきっかけのひとつが、2023年2月のUEFAカンファレンスリーグ、ルドゴレツ戦です。アンデルレヒト公式は、この試合のPK戦で彼が最初の3本を連続で止め、チームを次ラウンドへ導いたと伝えています。若いGKが欧州のノックアウトラウンドでここまで鮮烈な主役になるのは簡単ではありません。
しかもこれは一発屋のハイライトではなく、年間最優秀選手受賞記事でも改めて大きな功績として振り返られています。クラブにとっても、サポーターにとっても、「フェルブルッヘンは大舞台に強い」という印象がそこで確立されたのでしょう。
ビジャレアル戦で“本物”だと示した夜
続くビジャレアル戦も、フェルブルッヘンを語るうえで外せません。アンデルレヒト公式は、2023年3月の敵地ビジャレアル戦を「unbeatable Bart Verbruggen」と表現し、ゴール前での安定感を称えました。年間最優秀選手の記事でも、彼はビジャレアルで「次々とセーブを見せた」と総括されています。
GKは、守備機会が多い試合ほど真価が出ます。しかもアウェーの欧州ノックアウトゲームとなれば、精神面の強さも問われる。その舞台で評価を一気に高めたからこそ、フェルブルッヘンは“将来有望な若手”から“トップリーグでも通用する素材”へと見方が変わっていきました。
ブライトン移籍でプレミア基準のGKへ
2023年7月、フェルブルッヘンはブライトンへ加入し、2028年6月までの5年契約を結びました。加入時のクラブ発表では、アンデルレヒトでの飛躍とU-21オランダ代表歴が紹介され、ブライトン側がかなり明確に“育成して主力化する未来”を見ていたことがうかがえます。
実際、ブライトン公式プロフィールでは、加入初年度に全公式戦27試合で7クリーンシート、2024/25にはプレミアリーグ36試合に出場してファーストチョイスへ定着したと記されています。プレミアはGKのミスが拡大解釈されやすいリーグですが、その環境で順当に序列を上げたのは、クラブが期待した成長曲線をきちんと描いている証拠です。
オランダ代表での飛躍、EURO 2024で歴史に名を残す
代表キャリアの伸びも印象的です。ブライトン公式によれば、フェルブルッヘンは2023年10月にフランス戦でA代表デビューを果たし、1969年以来で最年少級のオランダ代表GKとして先発しました。そこからわずか数か月後、ロナルド・クーマン監督は彼をEURO 2024のナンバーワンに指名しています。
UEFAの記録では、EURO 2024初戦のポーランド戦出場により、彼は21歳303日でEUROに出場した最年少級のGKとなりました。さらにフランス戦の0-0では、大会本大会の試合でクリーンシートを達成した最年少GKとして紹介されています。オランダ代表のゴールマウスは常に競争が激しいですが、そのポジションを20代前半で掴んだ事実は大きいです。
2025/26、若手有望株から“本物の主力”へ
フェルブルッヘンが“期待の若手”という枠を越えたのは、2025/26の完成度向上にあります。ブライトン公式は2026年4月時点で、彼がクラブ通算101試合に到達し、デビュー以来の総セーブ数、クロス処理、smotherの数字で高評価を受けていると伝えました。さらに、同記事ではこのシーズンにリーグのGKで最も多くボールに触れ、最も多くパスを試みた存在だとも紹介されています。
若いGKは、どうしても「足元はあるけど安定感はこれから」と見られがちです。ただフェルブルッヘンは、配球力の評価を維持したまま、ショットストップの数字も伸ばしてきました。ここまで来ると、将来性ではなく、すでにブライトンとオランダ代表を支える“現在進行形の主力”として見るべきでしょう。
まとめ
バルト フェルブルッヘンのプレースタイルは、現代サッカーがGKに求める要素をかなり高い水準で満たしています。足元で相手のプレスを外せる。高いラインの背後を消せる。近距離の反応で試合を壊さない。そして、後方から攻撃のテンポまで整えられる。だからブライトンのようにビルドアップを重視するクラブで重宝され、オランダ代表でも若くしてポジションを託されたのです。
もちろん、ハイボール処理やリスク管理の精度にはまだ伸びしろがあります。それでも、その弱点さえ“積極的に前進を選ぶGK”の代償として理解できるほど、彼の長所は明確です。バルト フェルブルッヘンは、守るためのGKであると同時に、試合を前へ進めるためのGKでもある。その意味で彼は、いまの欧州で最も時代に合った若手守護神の一人だと言っていいでしょう。




