FIFA TMSとは?海外移籍はどうやって成立する?国際移籍の“裏側”を解説

戦術・用語解説
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海外サッカーの移籍市場では、「クラブ間合意」「個人合意」「正式加入」といったニュースが次々に流れてきます。

ただ、クラブと選手が契約に合意しただけでは、移籍先のクラブで公式戦に出場できるとは限りません。

国際移籍では、その裏側でFIFA TMS(Transfer Matching System)を使った手続きが行われ、さらにITC(国際移籍証明書)を通じて選手の登録を移す必要があります。

大まかな流れは、

移籍合意 → TMSで手続き → ITCの発行 → 新しい協会で選手登録

です。

普段はほとんど表に出ない、海外移籍の“裏側”を分かりやすく解説します。

FIFA TMSとは?

TMSは、

Transfer Matching System(トランスファー・マッチング・システム)

の略です。

FIFAが運用する、選手の国際移籍を管理するオンラインシステムです。

FIFAはTMSについて、国際移籍の手続きを簡素化するとともに、透明性や情報の流れを改善するためのシステムと定義しています。現在、11人制サッカーではプロ・アマチュアを問わず、国際移籍でクラブと加盟協会がTMSを利用することが義務付けられています。

ここで知っておきたいのが、「国際移籍」の意味です。

FIFAの規則では、

あるFIFA加盟協会から別の加盟協会へ、選手登録が移ること

を国際移籍としています。

一般的には「海外のクラブへ移籍すること」と考えて問題ありませんが、厳密には国境ではなく、所属するサッカー協会が変わるかどうかが基準です。

なぜTMSが必要なのか?

たとえば、日本のクラブから欧州のクラブへ選手が完全移籍するとします。

移籍元クラブは「移籍金は10億円」、移籍先クラブは「8億円」と別々の内容を申告できてしまう仕組みでは、移籍市場の透明性は保てません。

そこでTMSでは、移籍契約がある国際移籍について、関係するクラブがそれぞれ必要な情報を入力・確認します。必要な情報に食い違いがあれば、そのまま手続きが進むわけではありません。

TMSは単なる選手名簿ではなく、

「この国際移籍は、どのような条件で行われるのか」をFIFAのシステム上で管理する仕組み

と考えると分かりやすいでしょう。

海外移籍はどうやって成立する?基本の流れ

では、日本のクラブから海外クラブへ完全移籍するケースを例に見てみましょう。

大きく分けると、次の流れになります。

① クラブ間・選手との契約がまとまる

② TMSに移籍情報を入力する

③ 移籍先の協会がITCを要求する

④ 移籍元の協会がITCを発行する

⑤ 移籍先の協会が選手を登録する

ポイントは、契約合意と選手登録は別の手続きだということです。

① クラブと選手が移籍に合意する

まず通常の移籍交渉が行われます。

完全移籍で移籍金が発生するなら、

移籍元クラブ ↔ 移籍先クラブ

で移籍条件を決めます。

それとは別に、

移籍先クラブ ↔ 選手

で契約期間や給与などの条件を詰めます。

TMSは移籍交渉を行う場所ではありません。

クラブや選手が合意した国際移籍を、正式な手続きへ進めるためのシステムです。

② TMSに移籍情報を登録する

合意後、クラブの担当者がTMSで手続きを進めます。

移籍契約がある場合、移籍に関係するクラブはそれぞれTMS上で情報を入力・確認し、必要な内容を一致させる必要があります。

TMSでは移籍に関する契約書や金銭条件なども扱われます。

ここまで来ると、ニュースで見る「クラブ間合意」の裏側で、かなり事務的な作業が行われていることが分かります。

③ 移籍先の協会がITCを要求する

次に登場するのが、

ITC(International Transfer Certificate)

です。

日本語では「国際移籍証明書」と呼ばれます。

選手が別のFIFA加盟協会へ登録を移す際、原則として移籍元の協会から移籍先の協会へITCを送る手続きが必要です。

たとえば日本からイングランドへの移籍なら、クラブ同士だけではなく、それぞれのサッカー協会も登録手続きに関わることになります。

④ ITCは原則72時間以内に発行される

現在のFIFA規則では、移籍元の協会はITCの要求を受けてから72時間以内に移籍先の協会へITCを送ることになっています。

以前はこの期間が7日間だったため、古い解説記事では「7日以内」と書かれていることがあります。

しかし、2025年1月1日に発効した規則変更によって、現在は72時間となっています。

さらに、移籍元の協会が72時間以内に応答しなかった場合でも、一定の条件のもとで移籍先の協会は選手登録を進めることができます。

事務手続きを放置することで、選手の移籍をいつまでも止められる仕組みにはなっていません。

⑤ 移籍先の協会が選手を登録する

ITCを受け取ると、移籍先の協会が受領を確認し、選手情報をTMSへ反映したうえで自らの登録システムに選手を登録します。

ここまで来て、FIFAの国際移籍手続き上、新しいクラブでプレーできる状態になります。

もちろん実際の公式戦出場には、それぞれのリーグや大会が定める登録条件なども関係します。

「移籍決定」=すぐ試合に出られる、ではない

この仕組みを知っておくと、移籍ニュースの見方も少し変わります。

たとえばクラブが、

「○○選手の加入が決定しました」

と発表しても、その時点で国際移籍に必要な登録手続きまで終わっているとは限りません。

FIFA規則では、原則としてITCの受領と新しい協会での選手登録などが済むまで、新クラブでプレーする資格は得られません。

そのため、

クラブ間合意
→ 選手との契約
→ 国際移籍の手続き
→ 選手登録

は分けて考える必要があります。

移籍報道で「契約合意」「正式契約」「選手登録完了」など表現が違うのには、こうした背景があります。

なぜ移籍期限日は時間との戦いになる?

夏や冬の移籍期限日には、

「締め切りまであと1時間」

「登録が間に合うのか」

といった報道が増えます。

これは契約書へのサインだけが問題なのではありません。

国際移籍ではTMSを使った手続きも必要で、ITCの要求も原則として移籍先協会の登録期間最終日までに行わなければなりません。

そのため期限日には、

移籍交渉をまとめる → 必要書類をそろえる → TMSで手続きを進める

という作業が一気に行われます。

移籍市場最終日の慌ただしさには、こうした登録実務も関係しているのです。

フリー移籍やレンタルでもTMSは使う?

「移籍金0円ならTMSは必要ないのでは?」

と思うかもしれませんが、移籍金の有無とTMSの必要性は別です。

TMSが対象としているのは、基本的に選手登録がある加盟協会から別の加盟協会へ移る国際移籍だからです。

そのため、契約満了によるフリー移籍でも、国外のクラブへ移って所属協会が変わるなら国際移籍の手続きが発生します。

海外クラブへの期限付き移籍(レンタル)についても、TMS上で手続きが行われます。FIFA規則でも、完全移籍だけでなく期限付き移籍を含む国際移籍についてTMS上の処理を定めています。

FIFA TMSを知ると移籍ニュースが少し違って見える

私たちが普段目にするのは、

「移籍金○○億円で合意」

「5年契約で加入」

といった華やかな部分です。

しかし、その裏側では、

契約合意

TMSで移籍情報を処理

ITCを要求・発行

新しい協会で選手登録

という手続きが進んでいます。

TMSは、その国際移籍を管理するためのFIFAのオンラインシステムです。FIFA自身も、TMSの目的として国際移籍の透明性や効率性を高めることを挙げています。

次に海外移籍のニュースで「クラブ間合意」と報じられたら、

「まだ選手登録までには手続きが残っているんだな」

と考えてみると、移籍市場をこれまでとは少し違った視点から楽しめるかもしれません。

まとめ

FIFA TMSについて、最後にポイントを整理します。

  • TMSは国際移籍を管理するFIFAのオンラインシステム
  • 国際移籍とは、選手登録が別のFIFA加盟協会へ移ること
  • クラブ間・選手との合意だけでは登録手続きは完了しない
  • 国際移籍ではITC(国際移籍証明書)が重要になる
  • 現行規則では、移籍元協会のITC対応期限は原則72時間
  • フリー移籍や海外へのレンタルでも国際移籍の手続きは必要
  • TMSやITCの手続き後、移籍先協会で選手登録が行われる

普段は表に出ませんが、TMSは世界中の国際移籍を支えている重要な仕組みです。

「移籍決定」の裏で何が行われているのかを知っておくと、海外サッカーの移籍報道もより理解しやすくなるでしょう。

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